miobell records レコードの音へのこだわり

レコードのカッティングの機械 NEUMANN VMS 70
ミオベル・レコードのリリースペースは、年に数作品。
他のインディペンデント・レーベルと比べて作品数は少ないのですが、この規模のレーベルとしては音への拘りが強いほうだと、周りから言われるようになりました。

レコードの制作状況を例にとってみます。
近年はレコードブームで、メジャー・インディーズ問わずアナログでリリースされる作品が増えてきました。音楽ファンとしては大変喜ばしいことですが、針を落とすと残念に思うレコードが結構あります。

話を聞くとCD向けに作ったマスター音源をそのままレコードのマスター音源として使っているアーティストがたくさんいるんですね。しかしながらCDとレコードではメディアとしての音響特性が異なるため、CD用のマスター音源をそのまま使っても、レコードならではの良さを引き出すことができず、最適な音像にならないのです。しっかりとレコードのことを考えられて作られているな、と思わされる作品に出会えることってそう多くはないんですね。

ミオベルでは必ずレコード用にマスタリングをやり直します。予算が調整できるときはレコード用にミックスからやり直します。過去にはカッティング後のプレス用マスターを3回作り直したことさえありました。(さすがに二度とやりませんが・・・)

レコードのことを理解されている実績あるエンジニアの方々に協力を仰ぎ、作品と向き合えてこれたことがよかったのだと思います。

また、専業のエンジニアによるカッティング(レコードに溝を掘る作業)では、アーティストと共に立ち会い、納得いくまで音作りを突き詰めてきました(一部コンピレーションアルバムを除く)。作業も日本で行うことが大半です。最後は0.5デシベル単位で音をどこまでつっこめるかも試しながら、アーティストと一緒に最適解を探すよう努力しています。

海外プレスは費用が安いので使いたいのはやまやまなんですけど、海外までカッティングに行って立ち会うことができないんですよね。先方のエンジニアにおまかせになります。それはそれで面白いのかもしれないんですけど、アーティストが納得する音に仕上げられるかどうか、少し不安になってしまいます。

知人のミュージシャンに聞いたところ、海外プレスの場合は、テストプレスを海外の工場から送ってもらい音を確認するだけで終わってしまうとのことでした。もちろん納得いかなければカッティングのやり直しをすることもできますが、その分の追加費用が発生し、スケジュールも遅延します。メールなどで伝えてやり直してもらうため、ニュアンスが伝わらないリスクもあります。

そのためアーティストが音にこだわる方で、レコードならではの納得のいく音を追求したい場合は、アーティストにもカッティングの現場に立ち合ってもらい音をつめる方がいいんですね。その場で音を決められるので追加の費用もかかりませんし、アーティストも納得してくれるし、何よりスケジュールを守ることができます。

日本でカッティングしてラッカー盤を海外のプレス工場に空輸、プレスだけ海外でやってもらうこともできるのですが、さすがにそれだと日本よりもコストが高くなるのでやる人はほとんどいません。反対に海外の腕利きのエンジニアにカッティングしてもらい、ラッカー盤を日本に空輸してプレスだけ日本で行うという話はよく聞きます。日本人のものづくりの品質の高さは、レコードでも顕著に表れますし・・・まあ気にしない人は全く気にしない話なんですけどね、これって。

勘違いしていただきたくないのですが、海外プレスがよくないと言っているのではなく、アーティストが音像をつきつめる上ではあまり向いていない、不便である、ということです。ミオベルでもまだまだ足りていないところが多いので、もっとレベルアップしてアーティストが生み出したい音を作れるお手伝いができるようになりたいですね。

・・・それで上記は、レーベル運営していれば当たり前のことだと思っていたのですが、どうやらそうでもないらしいことが最近になってわかってきました。この前も知人のミュージシャンに話をしたら、メジャーならともかく、インディーでそこまできちんとやっているとこってほとんどないから、その拘りをちゃんと伝えたほうがいいよ、と言われました。それで今回少しばかり書いてみました。

音に正解はあるようでないものです。結局どこまでいっても自己満足の世界、アーティスト各々が納得するかどうか、それだけなんだろうなとは思っています。

ただ、アーティストからこの音で出したくなかったと後から言われたら、すごく寂しいなと思うんですよ。幸いにもミオベルではそのような話は出ていないですけど、知人のミュージシャンで、過去OKは出したけど、実は納得しきれないままリリースしたことがあり、それを後悔している方もいらっしゃったので、そうはならないようにしたいな、と素直に思ったというか。そのためにレーベルとしてどこまでアーティストがこだわれる環境を提供できるのかを、そんなことを考えながら日々作業をしています。

もっと学んで精進したいです。

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