届きそうで届かない

 “切ない曲”というテーマのプレイリストを……と伺い、「大好物です!」と二つ返事でお受けしてしまいました。他の方のセレクトには敢えて目を通さず、独りよがりな選曲に徹してみました。

まず1曲目は、珠玉の未発表音源がたっぷり収録された「THE COMPLETE VIRGIN YEARS」を最近リリースしたPale Fountains。原曲はまだ配信されていなかったので、プレイリストには既存盤収録のライヴ・ヴァージョンを選出しました。Michael Headがパパパと歌うだけでもう切ない。こんなにすごい音源たちを眠らせていたなんて……(涙)。いかん、ペイルのレヴューで終わってしまう。いずれヴァイナル化されそうな気もするけど、一家に一箱の必聴盤です。


2曲目はThe Only Onesの代表曲。切なさのすべてが詰まっています。ググると「この曲はドラッグの歌だ」と一度発言しながら、後にそれを撤回したとか。カッコつけちゃったんですねえ(笑)。アーティストには失礼かもしれませんが、聴き手がどう感じとったかのほうが大事だと思います。英語には明るくないのですが、「Another Girl Another Planet」という言葉とヴォーカルのどうにも頼りない唱法から、「またフラれちゃったけど、どこかの星にはきっとだれかいい娘がいるはず」……みたいなストーリーを勝手に思い浮かべておりました。

さて、The Only Oneときたらあれもこれも……と、後は流れに任せたセレクトとなっております。どうも自分はあるタイプの男性ヴォーカルに切なさを感じがちなようで、女性ヴォーカルはBeat Happening、Marine Girls、The Pastels(スキャット?)のみになってしまいました。そのココロは……声がかすれてしまう瞬間や、メロディのちょっとしたズレに、届きそうなのに届かない……というもどかしい切なさを感じてしまうのです。こう書くとなんだか変態的ですね(笑)。

ヴォーカルのタイプは少々違いますが、Close Lobstersもすべてに切なさというか、すがすがしいまでに青年のアオハル的なものを勝手に投影してしまうバンドの代表格です。1曲に絞るのがとても苦しい……。メンバーが大きな旗を持って丘を走るPVがあって、それがまたイメージにぴったりだったな。あの時の彼らにしか出せないキラメキ。Pale Fountainsには「青春はいちどだけ」という邦題の曲があって、本当に言い得て妙なのですが、そういった一過性もまた切なさの正体なのでしょう。

人は成長しますし年も取るので、かつてのキラメキは未来永劫続くわけではない。ところが、何周も回って今また切なさを体現しているMichael Headみたいな人もいて、年代それぞれの切なさがあると知りつつあります。

The Pastelsは血気盛んな80年代より90年代以降の方が切なさを感じる気がして、近作から選んでみました。最後に11曲目、もともとChoo Choo Trainのシングル収録曲だったのに、なぜバンド名義じゃないんでしょうね。検索で探しにくいし、古いファンはちょっと寂しいです(笑)。




プレイリスト(Spotify)
01.Hey There Fred / The Pale Fountains
02.Another Girl, Another Planet / The Only Ones
03.Outdoor Miner / Wire
04.What Do I Get? / Buzzcocks
05.This Is Love / The Gist
06.What's Important / Beat Happening
07.In Love / Marine Girls
08.Three Cheers for Our Side - Glasgow School Version / Orange Juice
09.L.O.V.E. Love / Orange Juice
10.Going to Heaven to See If It Rains / Close Lobsters
11.Wishing On A Star / Ric Menck
12.Cattle And Cane / The Go-Betweens
13.Night Time Made Us / The Pastels

14.The Most Beautiful House in Airdrie / Stephen Pastel, Gavion Thomson, The Pastels


文・セレクター: 小出亜佐子(英国音楽/DJ)

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