『BLUE TENTION』と『Miobell Records』。

 は2023年2月21日、短冊CDコンピレイション『BLUE TENTION #bt20230221』が日本のCD/レコードショップ店頭に並んだ。この日は日本で短冊CDと呼ばれるパッケージが生まれて35周年を迎えた日であり、それを記念してなりすレコード、マーキーハウス、ミオベル・レコードのインディペンデントで活動している3つの音楽レーベルが同時に短冊CDをリリースしたのだ。第一弾となった5曲入りのミニ・コンピレイションは、おかげさまで早々に完売という結果になり、昨年夏にリリースした第二弾も堅調に推移している。

 ミオベル・レコードは2016年11月にスタート、毎年数タイトルずつ、これまでに20タイトル以上をリリースしてきたけど、雑誌の付録を除いてはコンピレイションアルバムを作ったことがなかった。通常一般人が始めた音楽レーベルではコンピレイション作品が主体となることが多いため、これはかなり珍しいらしい。もともとはアルマグラフと杉本清隆さんの作品をリリースするために始めたレーベルで、活動初期から才能あるアーティストの作品をリリースすることがミッションだったから、コンピレイション作品を作ろうといった話にはならなかった。

 転機となったのは2021年。レーベルが5周年を迎えるにあたり、これまでの活動の振り返りをしたことがきっかけだった。アーティストや周りの友達にミオベルってどんなレーベルなのかと尋ねると、“色がないレーベルだね”という意見が多かった。“どちらかというとレコード会社に近い存在だよね”という意見も多かった。もともと特定のジャンルに特化したいとは思わず、サポートするアーティスト各々に貢献できればいいなあと思っていただけだったからこれはその通りだなあと思った。

 一方で音楽ライターの知人に尋ねたところ意外な答えが返ってきた。“ミオベルってさ、音楽ジャンルは一見バラバラだけど、楽曲を聴いているとなんか統一感みたいなものも感じるんだよね”“ミオベルの場合は音楽ジャンルというよりも世代でくくった方がわかりやすいよね。90年代後半から2000年代前半の「続・渋谷系」の影響を感じるところが中心で、そこにシティポップやJ-POPも少し混ざった感じがする”というものだった。音についてはマスタリングの影響も大きいのかもしれない。一部を除きマスタリングは全てアナログ機材を活用したマスタリングにしていたりするしね。

 その後レーベルの方針についてスタッフと打ち合わせをしたり、一部のミュージシャンにもヒアリングをしたりを繰り返した。ミオベルの基本方針である“アーティストのやりたいことを実現するためにサポートする”という軸は生かしつつも、“もう少しわかりやすいブランドカラーを何かしら持っておいた方がいいのではないか”ということに。

 そこで5周年を機にミオベル・レコードのブランド・フィロソフィー、レーベルロゴをアップデート、さらにレーベル独自のクリエイティブやブランドカラーも制定してホームページも刷新。その際サウンドについても議論したのだけど、結局アーティスト毎によるからひとつ何かのジャンルを打ち出すのもちょっと違うよなと。全体的には60年代から現在に至る洋楽の影響を受けてそれを独自に昇華しているアーティストが多いという共通項があったからそれをNOVA ACOUSTIC(ミオベル考案の独自呼称)と位置づけることにした。

 レーベルカラーには「表情に出さず心の奥底で感動する」という意味がある。だから「どこか切なさを感じる音楽」「ひたひたとジワジワと心に染みてくるような作品」をリリースすることが「らしさ」につながる気がした。それではじめたのが『BLUE TENTION』シリーズ。アーティスト作品とは大きく違うのは、“レーベル主導で企画を進める作品”であるということ。楽曲の選定をはじめ、デザインから何から何までレーベルスタッフが中心となって進めつつ、“ファン目線”であることも意識しながらやっている。洋楽邦楽メジャーインディー年代地域問わず世界中からコンパイルするのがコンセプトで、新しい発見につながったら。

 特製歌詞カードやライナーノーツを封入しているのは、アーティストあってのコンピレイションだし、多少なりともガイド役を果たすのがこのシリーズ作品の役割だと思ったから。できる範囲でアーティストのコメントも掲載している。コンピレイション作品では珍しいかもしれないけど、このような思想は編集者として長年活動している影響もあるのかもしれない。根底にあるのは「いい音楽を紹介したい」という極めて単純な気持ち。

 昨年は2タイトルをリリースした。今年も数タイトルを予定している。当面はきっかけとなった短冊CDでリリースするけれども、レコードも近いうちには作るつもり。数年後には何かしらミオベルの独自色が見え隠れするようになっているといいのだけど。ミオベル・レコードはどんなレーベルなのか、近い未来に皆さんと答え合わせができたら嬉しいな。

 最後にここ数カ月聴いている極私的ブルー・テンションなプレイリストを。
僕の周りは特定のジャンルに偏って聴く人はあまりいなくて。J-POP、洋楽、アニソン、R&Bはじめジャンルレスだし、ボーダーレスだけど、どこか切ないがある曲を30曲強集めてみたのでよかったら聴いてみてほしい。キラキラした切ないギターポップからネオアコ、J-POP、歌謡曲、R&B、アシッドジャズ、アニソン、インストなど多岐にわたるジャンルからセレクト。部屋の片隅で体育座りをしながら、目をつぶりながら、お気に入りの珈琲でも飲みながらね。


ブルー・テンション作品は全てリマスタリングをしている。サブスクで配信されている音源からさらに気持ちよく聴ける音になっている(はず)なので、気に入ったらお近くのレコードショップで買って聴いてみてください。マニアの方はその違いを聴き比べるのも面白いかもね。



プレイリスト(Spotify)

文・セレクター: 黒須 誠(編集者/パブリシスト/miobell records)

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